「唯 の 柿 の 木」
火・水曜休廊
土12:00〜17:30と19:00〜23:00
(OPEN時間はカフェの営業時間に準じます)
北村 和也 1989年高知市生まれ。
愛知県立芸術大学大学院油画版画領域修了
この柿の木に、僕はなんら特別な出会い方をしたわけでもない。人生において何かしらの重要な役割を果たすようには思えないし、今後その予定もなさそうである(と、大袈裟に言ってみる)。しかし、一度は沈んでいた柿の木の存在が、偶然にも再び浮上し、僕はそれを掬い取った。おそらくこの程度の浮き沈みや取捨は、日常的に繰り返し起こっていることのなのかもしれないが、もしかするとその循環に歯止めをかけたいという思いがあったかもしれない。初めてこの木に遭遇したときよりも、いまの方がよりずっと、柿の木に出会っているように感じる。(2018,6,30展示テキスト『ある柿の木のこと 序文』より抜粋)
北村和也の現在の題材は1年半ほど前に出会った柿の木。その柿の木を見て忠実に描くわけではなく、記憶からだけ描き起こしたわけでもない。彼自身が描くことで形を持ち絵となる柿の木である。
しかし主導権は必ずしも彼だけになくそれが面白い。枝と枝の交わる間は不連続の空間にも見え、それぞれが別なことがむしろ彼には「結構重要」であったり、柿の木は「描いていくとその柿の木になっていく」のだと言う。
そもそもの柿の木と彼とは描いている間も何度か接触し、その度に意図的にも非意図的にも変化が起きる。関わらずとも時間は動き、自ら関われば関わってしまったと思いを巡らす。些細なことが大きな心境の変化となって、最初の柿の木自体ではなくなっていく。
対象のものごとと描き手の距離が近ければ近いように、遠ければ遠いように画面に現れてくる。
物事を変えようと動き主張するのもひとつの表現ならば、自分の尺度で関わったことや起きた事柄をごまかしなく受け止め、それに対しての思考と行為が画面を作りあげていく、その齟齬の無い様もまた真にリアルな表現ではないだろうか。
今回の個展では、絵画以外への試みも垣間見られます。ぜひご覧ください。
Art nest YOMO